待望の新世代“生活型MMORPG”となるか――冒険はもちろん生産や貿易を主軸にしたプレイも可能な「ArcheAge」の魅力をXLGAMESに聞いてみた

2013年02月16日 05:55

ゲームオンは2013年2月15日,日本国内でのサービスを予定しているMMORPG「ArcheAge」(アーキエイジ)のプレサイトを公開した

 本作は,韓国の著名なクリエイターである,Jake Song氏の率いるXLGAMESが世に送り出す,同社初のMMORPGだ。氏は,過去に手がけた「リネージュ」「風の王国」などで,韓国のMMORPGジャンルを切り開いてきたという人物。それだけに本作は,韓国ゲーム業界において,並々ならぬ注目を集めている。

 今回4Gamerは,プレサイトの公開に先がけ,韓国・ソウルに拠点を置くXLGAMESを訪れて,同社CEOのJake Song氏,ArcheAgeプロデューサーのAhn, Sung Jun氏に本作の全体像を聞いてきた。MMORPGの王道システムを踏まえつつ,生産システムに注力した“生活型MMORPG”とは,いかなるものなのだろうか。



ArcheAge

「ArcheAge」プレサイト



MMORPG業界の先駆者が手がけるMMORPG最新作


4Gamer:
 本日は,よろしくお願いします。まずはArcheAgeにどのような形で携わっているのかを教えてください。



XLGAMES CEO
Jake Song氏
Jake Song氏(以下,Jake氏):
 XLGAMESのCEOを務める,Jake Songです。会社経営と共に,ArcheAgeではエグゼクティブプロデューサーとして,開発・運営にまつわるすべての作業を統括しています。

Ahn, Sung Jun氏(以下,Ahn氏):
 プロデューサーのAhn, Sung Junです。ソンの下で,実装コンテンツの開発作業や,スタッフの進捗などを管理しています。

4Gamer:
 XLGAMESとしては,これまでどういった業務を行ってきたのでしょうか。

Jake氏:
 弊社はオンラインゲームに特化した開発会社で,2003年4月に設立しました。ArcheAgeは2006年に開発が始まり,2013年の1月に韓国での正式サービスを開始しました。したがってArcheAgeの開発期間は6年以上ということになりますね。

4Gamer:
 一般的なMMORPGと比べても,かなりの長さですね。Jakeさんが過去に手がけた「リネージュ」は,現在も韓国でトップシェアの一角を占めています。また「風の王国」も,ギネスブックに登録されるほどの長寿タイトルです(関連記事)。やはり,新作を作るとなると,そのプレッシャーも大きかったのでしょうか。



ArcheAge
風の王国
ArcheAge
リネージュ

Jake氏:
 そうですね。確かにプレッシャーはありましたが,もともと一つのことに没頭する性格で,そのプレッシャーに押しつぶされることなく開発に邁進できました。ほかにはない試みをたっぷり盛り込んでいるタイトルということもあり,開発作業は難航しました。βテストでのフィードバックを受け,システムの根幹から作り直したようなこともありました。

4Gamer:
 そうした苦労を乗り越え,ArcheAgeは韓国で2013年の1月16日に正式サービスが始まりました。現在の手ごたえはいかがでしょうか。



ArcheAge プロデューサー Ahn, Sung Jun氏
Ahn氏:
 まるで,自分の子供が誕生したような清々しい気分です(笑)。しかし同時に,これからしっかり育てていかねばならないという責任を強く感じています。

Jake氏:
 MMORPGは継続的にサービスを続け,新規コンテンツのアップデートを続ける必要があります。同時に,さまざまな問題への対応や改善作業も行わなければなりません。正式サービスを迎えたからといって,気が楽になったわけではなく,むしろこれからだという心境ですね。

4Gamer:
 ちなみに韓国でどれくらい注目されているのか,具体的に公開できるデータはありますか。

Jake氏:
 PC BANG(日本におけるインターネットカフェ)での占有率や総利用時間などの集計を行っている「ゲームトリックス」の発表になりますが,オンラインゲーム全体の中で,現在(1月30日時点)3~5位を推移しています。MMORPGのジャンル内では1位ですね。同時接続者数は非公開とさせていただいてますが,サーバー数は現在25個あります。

4Gamer:
 個人的な印象ですが,例えばNEXONやNCsoftといった誰もが知っている大手メーカーというわけではなく,これまで表舞台ではあまり動きが見えなかったXLGAMESが,いきなり最上位に躍り出たというのは凄いことだと思います。

Jake氏:
 確かにXLGAMESという会社そのものは,ゲーマーにとってなじみが薄いかもしれません。ですが弊社の開発スタッフは,業界歴の長いベテランが多数揃っています。そもそも私自身が,かつてNEXONの共同創業者でもあり,NCsoftで「リネージュ」を開発したメンバーの一員でもありましたからね(笑)。



ArcheAge



生産を軸に各種システムが有機的に結びついた“生活型MMORPG”


4Gamer:
 まだ日本では,ArcheAgeの情報があまり公開されていませんので,ゲームの大枠の部分を教えてほしいのですが,本作のMMORPGとしての基本コンセプトはなんでしょうか。



Jake氏:
 ゲームコンセプトを一言でいうならば,“王道的なMMORPG”です。
 MMORPGとして現在メジャーな遊び方は言うまでもなく,全部盛り込んでいます。最新世代のゲームエンジン(CryENGINE3)による美麗なグラフィックスやインスタンスダンジョン,PvP,攻城戦などですね。
 そして,それらの定番要素を全部押さえたうえで,ArcheAgeならではの魅力として挙げたいのは,“生産システム”に対するこだわりです。

4Gamer:
 生産システムそのものは,MMORPGに当たり前のようにありますよね。

Jake氏:
 その通りです。しかし,多くのMMORPGにおける生産システムは,サブコンテンツ的な扱いに留まっています。普段はモンスターを倒したり冒険を行いながら,その合間や息抜きに生産を行うような感じですよね。
 その点,ArcheAgeでは各ジャンルに属する膨大なレシピがあり,しかもほかの各種ゲームシステムと有機的に連動しています。それにより“生活型MMORPG”というべきタイトルに仕上がっているんです。

Ahn氏:
 極端な例ですが,戦闘を一切行わずに生産だけで遊ぶようなプレイスタイルでも,普通にキャラクターを育成し,MMORPGとして楽しむことができます。戦闘以外のプレイスタイルが充実していることで,プレイヤーは正真正銘の“仮想世界”を満喫できるんです。

4Gamer:
 オンラインゲームで“仮想世界”と聞くと,「Ultima Online(以下,UO)」「マビノギ」「Second Life」などを思わずイメージしてしまいます。ArcheAgeはどんな感じでしょうか。



ArcheAge
Ultima Online
ArcheAge
マビノギ
ArcheAge
Second Life

Jake氏:
 UOのスピリッツ,エッセンスを追求しようとしてきました。ArcheAgeには,その哲学が反映されているのではと思います。

4Gamer:
 UOは日本での人気が高く,それを聞いて本作に注目する年季の入ったゲーマーは多そうです。というのも,UOのようなコンセプトのMMORPGというと,これだというタイトルはあまり登場していませんから。

Jake氏:
 私は日本のサーバーでUOをプレイしていたのですが,“生活型MMORPG”が受け入れられる土壌があると肌身を持って感じました。しかしニーズがありながらも後続タイトルが登場しなかったのは,やはり作るのがそれだけ難しいということなのでしょう。そんな中ArcheAgeは,あの面白さに近づくことができたのではないかなと自負しています。



Jake氏のデスクにて。どこかで見たことがあるフィギュアが並んでいるような……

4Gamer:
 近年の韓国でメジャーなMMORPG,例えば「Blade&Soul」「The Tower of AION」「TERA The Exiled Realm of Arborea」などは,どちらかというとバトルやアクションの面白さ・痛快さを追求しています。その中で,“生活型MMORPG”という難しいコンセプトで,6年もの歳月を開発に費やすのは,XLGAMESという会社にとって不安ではなかったのでしょうか。



ArcheAge
Blade&Soul
ArcheAge
The Tower of AION
ArcheAge
TERA The Exiled Realm of Arborea

Jake氏:
 不安はありましたが,理想を実現すれば結果はついてくると信じ,これまで頑張ってきました。また,勝算も十分あると考えています。
 例えば,MMORPGは本質的に,長時間遊ぶことを前提にしていますが,あまりアクションにこだわりすぎるとプレイヤーが疲れてしまうと思うんですよね。

4Gamer:
 アクション性の向上で,長時間遊ぶ作品だと疲れてしまうという話は,最近よく聞きますね。



Ahn氏:
 その一方で,ArcheAgeは忙しい操作が苦手な人でも楽しめる王道的なMMORPGです。そのためかフィードバックを眺めていると,最近のMMORPGと比べてプレイヤー層の幅が広いという印象を受けます。

4Gamer:
 “生活型MMORPG”“仮想世界”というゲームコンセプトは,開発初期から決まっていたのでしょうか。

Jake氏:
 オンラインゲームにおける面白い要素を,ジャンルに関係なくできる限り盛り込むことで,魅力的な仮想世界を作り上げたいという思いが最初にありました。例えば「World of Warcraft」のPvE,「リネージュ」のPvP,「Ultima Online」の生活感などですね。

4Gamer:
 しかし,そのどれかにフォーカスを置くのならともかく,それらすべての要素を盛り込むのは,いざ実行するとなると凄まじく大変そうです。



World of Warcraft
ArcheAge
Jake氏:
 これは私のポリシーでもあるのですが,現在これがトレンドだからというだけの理由で,安直に開発したくはないんです。昔の話になりますが,かつて「リネージュ」や「風の王国」を開発したときも,周囲の人達からは「こんなゲームが成功するわけがない!」とさんざん言われていたんですよ。

4Gamer:
 そういえば「風の王国」の開発当時は,“MMORPG”というゲームジャンルそのものが世に認知されていませんでしたよね。その中で作るわけですから……。

Jake氏:
 ええ,あらゆる面で逆境でした。当時は通信インフラも貧弱で,1台のサーバーに多数のクライアントがネットで接続して,リアルタイムで同じ景色を見せることが本当に可能なのか? だとか。ゲームとして面白いか面白くないか以前の問題で,技術的に可能かどうかというレベルでの議論でした。

4Gamer:
 つまり,その時代の魅力的なコンテンツ/要素を全部取り込んで仮想世界を作り上げるというチャレンジ精神は,昔から変わっていないわけですね。

Jake氏:
 その通りです(笑)。





一次産業から貿易まで。プレイヤーが回すゲーム内経済


4Gamer:
 それでは生産を中心としたシステムについて,どういった遊び方が行えるのかを,簡単な例を交えつつ教えてください。



Ahn氏:
 正直なところ,いったいどこから説明すればいいのか悩んでしまうのですが……。
 まず,各生産ジャンルにおいてプレイヤーは,一次産業から携わることができます。例えば“料理”であれば,農地で小麦を栽培し,それを収穫してパンを焼く。“鍛冶”であれば鉱山で鉱石を採掘し,インゴットを製錬して武器や防具を作る。“建築”であれば植林を行って伐採し,家や家具,船を作れます。

4Gamer:
 UO好きとしては,それを聞くだけでワクワクしてきますね……。

Ahn氏:
 一口に農地での栽培といっても,小麦のほか,野菜や果物など,生産ジャンルごとに膨大な数のレシピがあります。また,牛からは牛乳が定期的に得られますが,これをと殺すれば牛肉として調理が行えるなど,同じ素材に対して複数の用途があることも珍しくないです。

4Gamer:
 そこまで膨大な種類の素材や生産物を用意したのは,なにか特別な意図があるのでしょうか。

Ahn氏:
 そうやってプレイヤーが手に入れたさまざまな品は,その地域に根付いた“特産物”になるんですよ。それを,ほかの地域まで持っていって売る,すなわち“貿易”により利益を生み出せます。

4Gamer:
 なんと,貿易ですか。

Ahn氏:
 ゲームの序盤は,マイキャラ自身が特産物を担いで運ばねばなりません。しかも,荷物の重さで移動スピードが遅くなります。しかし資金が増えることで荷車や馬車,さらには船などを手に入れられます。例えば危険たっぷりの新天地を旅して,そこで獲得した素材を使ってレアな装備品を作ったり,生産や貿易で一財産を築き上げることもできるんです。
 ちなみに貿易では,いわゆる移動魔法の類は行えません。特産物を運んでいる間は,基本的に自分の足で移動する必要があります。

4Gamer:
 生産,例えば農業でいうと,収穫までにどれくらいの時間が掛かるのでしょうか。

Ahn氏:
 一次産業に関しては,作物によって変わるものの,栽培から収穫まで1時間弱から数日,といったところですね。
 ちなみに生産を行うときは,フィールドに自分だけの農場(土地)を持てるので,そこで種や苗を植えて栽培できます。また,フィールドの空き地であれば,どこでも勝手に植えることもできますが……,自分の農場以外では,他人に荒らされてしまう(拾われてしまう)かもしれません(笑)。

4Gamer:
 フィールドのどこにでも……というのは面白いですね。

Jake氏:
 生産物によっては大変な労力を要するジャンルもあり,その代表例といえるのが“造船”です。仮に材料集めから組み立てまで全部一人で行うと,1~2か月は掛かってしまうでしょう。それに対してプレイヤーギルドを結成し,植林/木材の加工/パーツの購入/組み立てなど,それぞれを分業で行うことで,より早く建造できます。



ArcheAge

4Gamer:
 そうした素材だったり,パーツだったりを取引するプレイヤーもいるでしょうね。

Ahn氏:
 そうですね。そうやって出来上がった船に乗り込んで,新大陸との間で貿易を行っているギルドも実際にあるんですよ。

4Gamer:
 話を聞いているだけでも楽しそうです。



大航海時代 Online
ArcheAge
Jake氏:
 このあたりは,日本の「大航海時代 Online」のようだと,プレイヤーから言われたことがありますね。

4Gamer:
 なるほど。「大航海時代 Online」も,「Ultima Online」に雰囲気が近いというプレイヤーもいましたから,近いコンセプトである本作もそう感じることはありそうですね。




「Ultima Online」に続く,新世代の“生活型MMORPG”になりえるか? 日本でのサービス開始に期待したい


4Gamer:
 生産周りのシステムをとくに重視しているようですが,そのほかに注目してもらいたいところはありますか。

Ahn氏:
 CryENGINE3を用いたグラフィックスも自信があります。キャラクター作成時のカスタマイズ幅も豊富で,例えば“目”に関する項目だけでも涙腺の位置調整を含めて20種類近くあります。




4Gamer:
 現世代のゲームエンジンでは“Unreal Engine 3”の人気も高いです。あれと比較して,CryENGINE3の持ち味はどのあたりにありますか。

Ahn氏:
 光源や水面などをはじめとした,自然に関する描写力ですね。仮想世界の実現を目標に掲げるArcheAgeでは,ここがCryENGINEを採用する決め手となりました。ちなみに開発の初期段階では,1世代前のCryENGINE2を採用していたのですが,途中で丸ごと作り直しています。

4Gamer:
 話を聞いていると,ArcheAgeのゲームシステムはとても魅力的ですが,同時に独特なMMORPGだと感じます。世界各国のオンラインゲーム運営会社からは,どのような反響が多いですか?

Jake氏:
 同世代のMMORPGで似たタイトルがほかにないこともあり,新鮮で好意的に受け止められてくれていると思います。ざっくりと分けると韓国や中国ではグラフィックス,欧米では生産を主軸にしたゲームシステムの関心が高いですね。



XLGAMES社内の風景

4Gamer:
 日本版に関してはゲームオンによりサービスされることが,かなり早い段階で発表されていますが(関連記事)。

Jake氏:
 ゲームオンとの契約を発表したのは2009年の9月ですね。当時はまだ詳細なゲームシステムが決まっておらず,それこそプロトタイプ版やトレイラームービーしかなかったのですが,それでも弊社を信じて契約してくれたゲームオンには感謝しています。

4Gamer:
 日本でのサービス開始に向け,これからいよいよ本格的に動き出すことになりますが,最後に現在の意気込みをお聞かせください。

Jake氏:
 弊社のスタッフの多くは,幼少期に「ファイナルファンタジー」「ドラゴンクエスト」「クロノ・トリガー」など,日本の名作ゲームの数々を遊んで育ちました。あのころにゲームを通じて得た感動を,今度は我々が日本の皆さんに伝えることができるとしたら,なんて素敵なことだろうと思います。
 先ほども申し上げましたが,日本では生活型のMMORPGに対するニーズは大きいものの,「Ultima Online」に続くタイトルは,いまだ登場していないように見受けられます。ArcheAgeはそれに対するニーズを満たすと共に,MMORPGの新たな地平を切り開くという思いを込めて開発を行っています。ぜひ,ArcheAgeの日本サービスにご期待ください。

4Gamer:
 本日は,ありがとうございました。





 取材日(1月30日)のほんの2週間前,1月16日に韓国で正式サービスにこぎ着けたばかりの「ArcheAge」。その忙しいなかで,Jake Song氏の時間をもらって行った今回のインタビューだが,その内容から読者のみなさんは,どう感じただろうか。おそらく黎明期のMMORPGを知る人ほど,本作に対する期待感が芽生えたのではないだろうか,なんて推測をしてみるのだが,さて。

 まだ,日本ではこれからプロモーションが始まるという作品であり,質問の内容はJake氏の考えるMMORPGの形や,韓国での反響といったものが中心となった。戦闘系の話よりも,生産系に前のめりになって聞いてしまったのは,やはり生活系MMORPGを待望していたことの表れだと思ってほしい。いずれ,日本でのサービスが近づけば,より詳細な内容が聞けるはずだ。

 オンラインゲームの黎明期にあったUltima Onlineをプレイしていた筆者には,「UOらしいゲームは,UOだけだ」という意識がいまだに残っている。本作は,それを打ち破れる作品となっているのか。日本でプレイできる日が今から楽しみだ。